第15章 言えない口
ひと通り水で洗い流して頭をあげると、
鏡に悲しそうな顔をした自分が映っていた。
"pipipipi"
携帯がまた鳴る
(今日はよく鳴るな…)
みわ
「もしもし…」
山崎TEL
「ごめん…西側の廊下が汚れてるみたいなんだけど…掃除お願いできる?」
みわ
「はい、今行きます。」
私は髪の毛をまとめ簪で止めると、
西側の廊下へ向かった。
西側の廊下には明らかに土足であがった足跡があった。
私はホウキで砂を外に掃きだすと雑巾をかけていく…
(疲れたなぁ……)
廊下から見えるお部屋の時計をみると20時を回っていた。
「お疲れさま」
背後から誰かに話しかけられたので急いで振り向くと、
そこに山崎さんが立っていた。
みわ
「山崎さんも…お疲れさまでした。」
山崎
「今日は休日返上で働いてくれてたんだね。さっき副長から聞いてさ…
それなのに沢山動かして悪かったね。」
みわ
「いいぇ…」
山崎
「で、明日なんだけど日曜だし休んだらどうかなって提案しに来たんだけど…どうする?」
みわ
「でも…」
山崎
「休めるときに休んどかないとね。よし!休もう!!副長には俺から言っとくから。」
(良い先輩に恵まれたな…わたし…)
みわ
「ありがとうございます…」
山崎
「どういたしまして!って言うか…敬語やめて良いって言ったでしょうが。
長い付き合いになるんだからタメ語で良いって。」
みわ
「うん…」
山崎
「あと着物…ずぶ濡れだよ、早く着替えなくちゃ風邪ひくよ。」
みわ
「……」
山崎さんを見送って掃除道具を片付けるとトボトボ洗濯場へ向かった。