第20章 私の変化
隈無清蔵
「あとこんな話も知っていますか?」
(次はどんな話かな?)
隈無
「昔…貧しい家の女子が厠掃除をしていると……
便器から汚物まみれの老人が這って出てきたそうです。」
(汚物まみれの老人が這って出てくる??
汲み取り式の厠だった頃の話かな?
っていうか…怖い話なの!?)
隈無
「女子はたいそう驚きながらも老人を引き上げたそうだ…」
(引き上げたの?汚物まみれの老人を??
凄く勇気ある人なのね…偉いな…)
隈無
「すると老人が
お主は汚物まみれのワシを恐れず助けてくれた…
今1番に欲しいものを厠から出たらすぐに与えてやろう…
と言い残し老人の姿はパッと消えたそうだ。」
(1番に欲しいものを??)
隈無
「その女子が半信半疑でトイレの外へ出てみると、
そこには女子の家に厠を借りにきた若い旅人がいた。
そう…女子が欲しかったのは異性との出会いだった。
家を助ける為に毎日働き詰めで
自然と異性との出逢いは皆無の生活を送っていたのだから…
それから女子と若い旅人は互いに惹かれあい……
私が生まれたそうです。」
みわ
「!(´⊙ω⊙`)!」
(じ、実話!!?…知るわけないよ!!!)
隈無
「だから…私は…厠の掃除には特別な感情を持っているのです。」
(なるほど…)
みわ
「素敵なお話ですね…
あー、私も、お爺さんに逢いたいです!」
隈無
「何か願いごとでも?」
みわ
「私も素敵な男性と出逢いたいです////」
隈無
「!?」
そう答えると何故か先輩の顔が赤くなる。
隈無
「佐藤さんは…逢わずとも…毎日厠の掃除をしているから…
願いはもう叶っているかもしれませんよ。
例えばほら…いつも一緒に居る私…かも。」
"ヴゥ〜〜"
先輩はゴム手袋をつけたままの私の手をとる。
みわ
「え?なんですか?ちょうどサイレンの音で聞こえなくて……」
隈無
「い、いえ…なんでもないです。今日はここまでにしましょう。」
みわ
「はい!」