第1章 始まりは突然に
始まりはそう──数日前の蘭との会話だった。
「え?2月14日?」
「そうですよ!2月14日!」
「な、何かあったっけ?」
ポアロでの会話。が休憩に入ったのをきっかけに、蘭と雑談をしていたのだ。
2月14日という日付に覚えがないははて、と首を傾げた。
「え!お姉さん覚えてないんですか!?バレンタインですよ!バレンタイン!!」
蘭に物凄い剣幕で言われ、ああ、と思い至る。そういえば高校の頃、お世話になった部活の部員や顧問にチョコを渡してたっけ。
「あー、バレンタインかぁ……」
は困ったように笑った。蘭が眉を八の字に下げ、上目遣いでを見る。
「今年は作らないんですか?私、お姉さんのチョコ楽しみにしてるのに……」
「うーん……別にあげる人いないしなぁ……」
苦笑すると、蘭はきょとんとした表情になる。その表情に、もきょとんとした。
「あれ?いるじゃないですか?」
「……誰?」
「子供達もそうだし、博士や新一のお母さんやお父さんに……あと新一もそうじゃないですか!」
「……ああ、そっか」
はポンと手を打った。
確かに。子供達はまだしも、両親や博士、新一に渡すなんて考えもしなかった(というか、新一は毎年すごい量をもらっているからあげる気がしなかったというのが本音だ)。