第3章 Valentine
連れて来られたのは──イルミネーション。
「わーっ、綺麗!」
「前に『行きたい』って言っていましたよね?」
「え?」
そういえばそんなことを言っていた気がするが──
「……それ、かなり前ですよね?」
「記憶力はいい方なんですよ」
「……食えない男」
「お褒めに与り光栄ですね」
の皮肉もさらりと返す安室。はぷぅっと頬を膨らませた。
「それにしても……まさかあなたがナンパされるとは思いませんでしたね」
「えっ?あれナンパなんですか?」
「……は?」
「え、あれナンパなんだー……。あんな風に誘うんですかね、今時の人って」
割と本気でそう思っていたは大真面目にそう話す。だが安室は何がツボに入ったのか盛大に吹き出した。
「んなっ!?何で笑うんですか!」
「いや、悪い……。あんまりおかしなことを言うものだから、つい……」
そんな安室の言葉に、は顔を真っ赤にしてぽかぽかと安室を殴った。
「……でも、連れて来てくれてありがとうございます」
が生真面目に安室に頭を下げた。そして小さく呟く。
「……今年のバレンタインはかなり楽しかったなぁ……」
色んな人とチョコを作って、色んな人に渡して。
普段なら渡せない人にも渡すことができて。
「……来年もこんな風に過ごせたらなぁ」
ふと周りを見渡すと、──「……あら」蘭と新一の姿があった。やっぱり解毒剤飲んだんだ。は内心ホッとしていた。
「……明日にでも根掘り葉掘り聞かなくちゃ、ね」
「さん?ニヤニヤして、どうしました?」
「いえ?弟の恋を見守っていたんです」
はフフッと小さく笑った。