第61章 天邪鬼な子守唄 −1−(徳川家康)
「迦羅…ねぇ、迦羅」
ぐっすり眠ってるか。
あんまり寝返りうつから、そんなに端まで寄っちゃってる。
今に布団から落ちるからね。
お腹の前に腕を回して引くように力を入れると、迦羅の身体は少しだけこっちを向いた。
「もっとこっち、おいでよ」
「んー……」
「んー、じゃなくて」
ちゃんとして寝ないと、風邪ひくよ。
…くっついてないと、俺も寒いし。
更に腕に力を入れると、迦羅はゴロンとこっちに向かって寝返りをうった。
額がくっつきそうなくらい近くに。
もぞもぞと布団を掛けてあげると
肩を竦めてほんの少し、迦羅が微笑む。
「…くすぐったい」
「寝てる時まで、呑気な顔」
いつもこうして一緒に寝てるのに、何でかな。
毎回違う、ドキドキする感じ。
寝てる間もあんたが百面相するからか…
いや、冗談だけどね。
「…何か俺、眠れなくなっちゃった」
あんたが離れていく感覚で目を覚まして、そしてあんたの寝顔見て、こうしてくっついてたら。
大好きな子とこうしてたら、当たり前だよね。
そっと髪を梳いてみると、ピクリと反応した迦羅がゆっくりと瞼を持ち上げた。
「ん……家康…」
「ごめん、起こした?」
「どうしたの…?眠れないの?」
そうだよ。あんたのせいでね。
髪を梳きながら眺める、あんたの半分寝呆けた顔も、すごく可愛い。
「まだ夜中でしょ…」
「あんたがだんだん離れていくから、寒くて目が覚めたの」
「…そっか、ごめんね…」
謝りながら、迦羅は俺に腕を回してギューっとくっついて来た。
迦羅の体温がすごくあったかい。
「こうしてると、あったかいよ…」
「まぁね」
嬉しいけど、ますます眠れそうに無いんだけど?
あんたは寝呆けてるから、平気かも知れないけど…これ、どうしてくれるわけ?
「家康……」
「何?」
「ふふっ、大好き」
「………わざとやってるの?」
「ん?」
少し顔を上げて俺を見つめる迦羅が、このどうしようも無いドキドキを加速させていく。
俺ばっかりこんな気持ちにさせて…。
あんたがそんなだから、好きって気持ちが止まらないの、ちゃんとわかってるの?