第40章 戦国狂想曲1幕③(番外編/小話)
謙信様が去って行った茶屋で、迦羅さんと二人。
前々から、迦羅さんが信長様か謙信様を好きだというのは薄々感付いていたんだ。
どっちにしても、迦羅さんを応援するよ。
…か。
良く言えたな、俺。
もちろんそれは嘘じゃない。
俺は迦羅さんの幸せを願っているから。
だけど、何かこう…迦羅さんへの想いが日に日に大きくなっていくような気がする。
これは恋と言うものなのか?
宇宙物理学的に言って恋なんだろうか?
でも、迦羅さんはいつも風のように過ぎて行く。
まるで俺のことなんか見えていないように。
だけど今、迦羅さんに下手なことを言うわけにはいかないんだ。俺と迦羅さんの関係が…恐ろしく悪いものになってしまうからね。
やっぱり俺も…
信長様や謙信様のような男になるべきなんだろうか?
ギャップ萌え、俺様、ドS、性欲の強そうな。
あ、いや、性欲が強そうなのは偏見かもしれないね。
まあすべて俺にとって未知の世界だが。
「佐助くん、どうしたの?」
「い、いや、何でもないんだ」
「本当に?」
ああ迦羅さん、そんな可愛らしい顔で俺を見ないでくれないか。
ハートブレイクした俺は今、飛び散った破片でいっぱいなんだ。
春日山に帰ったら指南を受けよう。
信玄様の大人の恋の手引き、
謙信様のヤンデレ男の作り方、
幸村の純粋ピュアなハートも役に立つかもしれない。
「じゃあ、私行くねっ!」
覚悟を決めた迦羅さんが立ち上がる。
咄嗟にその細い手首を掴んでいた。
「…佐助くん?」
「いや…迦羅さんの恋、上手くいくといいね」
「うん!ありがとう」
走り去って行く後ろ姿を見て、心に隙間風が吹き荒れた。
顔を伏せた佐助の眼鏡の奥では…
キラリと光る一雫。
「お客さーん、もう店仕舞いだよ」
追い払うかのように繰り出される氷のような言葉。
佐助はとぼとぼと、茶屋を後にした…。
完