第1章 血塗られていく赤い布
「な、なによコレ。」
「誰だ?」
「ひぃっ!?」
見覚えのある大きな耳、聞き覚えのある低い声、
・・・そして、鋭い牙を備えた大きな大きな口。
間違いない・・・、あの時の狼だ。
「赤ずきんじゃねえか、久しぶりだな。」
「何で・・生きているの?」
腹に石を詰めて湖に沈めまでしたのに。
「それはね・・・オマエを食べてやるためさ。」
「おばあ様はどこに?」
そんなこと聞かなくても答えはとおに分かってた。
「婆は俺の胃袋の中に居るぜ。」
「じゃあその手はまさか・・・。」
「婆のだぜ。」
「俺も学習したよ、丸のみじゃダメだって。
だから食う前に殺してやったんだ。」
そんな・・・おばあ様が。
「じゃあお前も食うか。」
おばあ様がおばあ様がおばあ様がおばあ様が
「よくもおばあ様をっ!」
私は無意識のうちに近くにあった包丁を
手に取り、狼の心臓を一突きにしていた。
私の頭巾は赤から赤黒い色に
・・・染められていた。