第1章 保健室
「…先輩?」
「ん?」
「あの、どいてくれますか…?」
「…無理。」
二人だけの保健室。
―――
あたしは頭痛で授業を抜けてここにきた。
保健室の先生は偶然いなかった。
でもその机には【ちょっと外に出ます!二つ目のベッド空いてるので、具合悪かったらこの紙に名前書いて寝ててね】と殴り書きしてあった。
二つ目のベッド…?
一つ目のベッドは空いてない、誰かいるってこと?
あまりにも静かだったから、あたしはつい一つ目のベッドのカーテンをそっーと空けてしまった…。
すると…
空けた瞬間に手をグィっと捕まれた。
「きゃっ!!」
そして、一つ目のベッドの主の上に思いっきり覆い被さってしまった。
そこには背が高く、少し茶髪っぽいクルッとした髪に、腕捲りした乱れたYシャツ。 綺麗な睫毛、黒い瞳。鼻は高く端正としかいいようがない、顔立ちの男が気だるそうに仰向けに寝ていた。
「ごっごめんなさい…っ!」
「…。」
いくら手を引っ張られたとはいえ、相手は男の先輩。
あたしが先輩を押し倒したような形になってしまった。
あたしが慌ててベッドから降りようとした、そのとき…
ドサッ
「っ!?」
いきなり視界が反転し、あたしが先輩に押し倒される形になった。
「ちょっ…ちょっと…っ」
あたしが状況を読み込めず、固まっているとその人は初めて口を開いた。
「…ちょっと相手しろよ。」
そして色っぽくニヤリと笑った…。