第16章 赤い糸
また少ししんみりしてしまった空気を感じつつ、時計を確認すると23時を回るところだった。
「あっ、ヤバい。もう寝ないと明日も早いよ。」
七葉はそう言うと、慌ててネイルキットかたし始める。
加州「その事なんだけど、主。今夜は俺と手をつないで。」
「へ?流石にそこまでしなくても大丈夫だよ?」
今寂しい等と言ってしまったから、早速心配されてしまったのかと聞くと、加州の返事は予想と外れていた。
加州「いや、そうじゃなくて。俺達昨日、その、、抱き合ったまま眠っちゃったじゃん。たぶん、主に触れてないと、俺だけこっちに残っちゃうから。」
加州の言葉に、七葉は昨日事を思いだし顔を赤くする。
昨日は不覚にも、加州に甘えて泣いてしまったのだ。
しかし、加州の話もありえる。
こちらの世界に、加州だけを残すなどできない。
「わかった。」
七葉は返事をすると、ベッドメイクをして布団に入った。
「はい。」
掛け布団をめくって加州を誘ってから、自分がかなり大胆な事をしていることに気がついた。
シングルサイズのベッドに二人。
七葉は、考えた瞬間持ち上げていた掛け布団を落とす。
「あっ、えっと、、」
そのままモゴモゴしていると、加州が自分で布団をはぐって入って来てしまった。
加州「主?」
布団の中で、そっと差し出された左手を掴む。
「ねぇ加州、これ寝てる間に手、はなしちゃわないかな?」
加州「確かに。あっ、そうだ。」
加州は七葉の腕を引いて半身を起こすと、自分の髪を結っていた布をほどき自分と主の手首に巻き付けて結ぶ。
加州「はい。これで安心でしょ?」
「うん。」
傷にならないようゆるく結ばれた布は、何だから赤い糸のように思えた。
「後はアプリを起動して寝たら良いのかな?アレ?そういえばすごく今更だけど、私がゲームと現実を行き来できる条件て何?」
七葉は、すっかり大事なことを聞いていなかったことを思いだし加州にたずねる。
加州「あぁ、それは主が消えても歴史上支障がない時にアプリを起動するとあっちに行けて、現実に戻る事を考えて眠るとこっちにこれるみたいだよ。」
まさか俺まで来ちゃうとは流石に思わなかけど。と笑う加州に納得して七葉は横になり、戻れるかはやからないがスマホのアプリを起動した。