第14章 番剣
購入した服に着替えるため、トイレに行った加州をエレベーター前のホールで待っていると、隣のゲームセンターのクレーンゲームに可愛いぬいくるみを見つける。
「あっ、新しいヤツだ!」
まだ来ないし見える位置なら平気だろう。
七葉が機械に近付き眺めていると、2人組の男に声をかけられる。
男1「ねぇ、お姉さん1人?」
「いえ、連れを待ってるので。」
男2「それって女の子?なら、その子も一緒に遊ばない?」
「遊ばないです。」
男2「何、それ面白いんですけど~。」
こっちはちっとも面白くないんすけど~。と頭の中で悪態をつきつつ、チャラチャラした人間にうんざりしていると、加州が着替えを済ませて戻って来た。
加州「主~、お待たせ~。って、コイツら何?知り合い?」
「違うよ、行こ。」
そのまま無視して立ち去ろうとすると、後ろから強引に手首を掴まれる。
「キャ、何ですか?」
振り払おうとしても離れない手にあからさまに嫌そうな顔をすると、次の瞬間には加州が相手の胸ぐらを掴んでいた。
加州「主の事、離してくんない?」
男1「はぁ?主とか、何プレイ?お前、こいつの犬なわけ?」
加州「そうだよ?と言っても刀だけど。」
そう言うと、加州は相手の耳元へと顔を近づける。
「離さないと、その腕、斬っちゃうから。」
凄んだ声と怖い顔で睨んだ加州に、怯んだ相手は即座に逃げていった。
あんな顔の加州は、はじめて見た。
加州「大丈夫?主?」
固まったままの七葉に、加州が声をかける。
「、、怖、、かった。」
加州「アイツらが?それとも俺が?」
加州が、そっと体を近づけると、七葉は一歩後ろへと身を引いた。
「あっ、私も、ちょっとトイレ行ってくる。」
足早に立ち去る主の背を見送りながら、独り言を呟く。
加州「ちょっと、やり過ぎた。」
だとしても、主に危害を加えるヤツを見過ごしたりは出来なかった。
加州「はぁ、怯えられてないといいけど。」
そんな事を思っていると、何事もなかったかのように七葉が戻って来た。
「お待たせ、次はおかずを買いに食品売場に行こう。」
そう言って、歩き出した主の服の袖から赤くなった手首がチラッと見える。
加州「主?」
その手を掴もうとすると、サッと手を引っ込められた。