第13章 女装デート
「あっ、サイズ大丈夫でした。」
何か言いたげな店員さんが言葉を発する前に、すかさず割って入る。
「全部買っていくので、片付けも大丈夫です。」
と売り場に戻す商品が無い事をアピールしてサッとカーテンを閉める。
店員「あっ、ありがとうございます。」
それっきり、去っていった店員さんにホッとしつつ加州に声をかける。
「加州、脱いだらお会計して来ちゃうからかして。」
加州「ホントに良いの?全部買ってもらっちゃって。」
加州は戸惑いながら告げる。
実際、こちらのお金がない以上自分では買えないが、全部は流石に多いんじゃないかと。
「良いよ。現実に来た記念の、プレゼントだと思って気にしないで。」
七葉はそう言うと服を受け取りレジへと向かった。
お会計を済ませ、すぐに着られるように値札のタグを切ってもらう。
フィッティングルームの前に戻ると、元の服を着た加州が出てくるところだった。
店員「お疲れ様でした。、、あっ」
やっぱり、見間違いじゃなかったと店員さんが気づいて、思わず声が出てしまったようだ。
加州「シーー。」
加州は顔の前に指を立てて見せ、こちらに気づいたのかそのままやってくる。
「うわ、すごい見られてる。」
その後ろ姿を、店員さんが何だかときめいた視線でジーと見つめていた。
加州キレイだし、恐らく何だかの事情で性別を伏せないとお忍びで買い物ができないモデルやアイドルに勘違いされたのではなあだろうか。
実際はゲームから出てきた刀という、芸能人より更に出会す事の無い人だが。
ほとぼりが覚めるまで、しばらくはこの店舗での買い物は控えよう。
そんな事を考えながら、七葉は店を出るのでった。