第10章 宣戦布告
薬研「加州の旦那、後で手入れ部屋に来てくれねぇか?折り入って話がある。」
加州「わかった。」
加州は、薬研の神妙な口ぶりにさっきの様子もあったし、素直に応じた。
薬研「悪いな、なるべくアイツらには見つからないよう頼む。」
薬研はそれだけ言うと、何も話して居なかったかのようにスッと通り過ぎて行った。
風呂と食事を終え、加州は手入れ部屋に向う。
薬研とは、夕食の時も顔を合わせたがとくに変わった様子もなく振る舞っていた。
やはり、他のヤツに聞かせられない事なのだろう。
七葉、五虎退、乱の3人は食事の後も何やら楽しそうに小広間で遊んでいたから、当分は見つからないはすだ。
そんな事を考えている内に手入れ部屋に到着する。
中には、先に来た薬研が待っていた。
薬研「旦那、呼び出しちまって悪い。乱や五虎退、大将の前で話すのは、ちょっとな。」
薬研のこの口ぶりにからして恐らく良くない話だろう。
加州は覚悟をしてから問いかける。
加州「で、その話って?」
加州の言葉に、薬研は薬を手に取り説明をし始めた。
薬研「昼間調合した薬。あれは、大将を休ませるために眠り薬を混ぜただけの何の効果も無い、ただの気休めの薬だったんだ。」
加州「え、、」
薬研「原因がわからないうちに、下手に治療して副作用が出たり悪化されたりしてもなんだし、寝かせてるうちに正確な原因を調べて治療する方が最善だと思った。」
乱や五虎退、それに主自身を不安にさせないためにあの場ではいいださなかったという薬研に、加州は納得しつつも疑問が残る。
加州「でも、実際主は治ってた。つまり、たまたまその成分があってたとか、寝れば治る程度のちょっした寝不足からきたみなものだったってこと?」
だとしたら何もわざわざ呼び出したりしないだろうから、恐らくこれは違うのだろう。
だが加州は一応確認する。
薬研「その可能性も否定は出来ない。だが、他に気になることがある。」
加州「何?」
薬研「1つ聞きてぇんだが、旦那は大将に口づけたり、それ以上の事をしたことはあるか?」
薬研の突然の質問に加州は一瞬動揺し、薬研はその一瞬を見逃さなかった。
薬研「あるんだな。となると、やっぱりそれが要因か。」
加州「どういうこと?」
薬研「俺っちは、さっき薬を飲ませる時に大将に口づけた。」
加州「はぁ!?」
