第23章 欲しい物
薬研に黒のPコートとグレ一のスヌードを渡し、自分もコートを着て外に出る。
途中郵便局に寄って書類を発送し、前回より少し遠いモールへとやって来た。
薬研「確かに、こいつはスゴいな。」
駐車場に着くと、薬研は辺りを見回して呟く。
「国内最大級だからねぇ、これでも世界ランキングだと28位らしいよ。」
薬研「驚愕だな。」
「ね。世界は広いゼよ。」
薬研「!!!」
振り返った薬研に、七葉は笑いながら店の入口に向かう。
「まずはスタバで豆だね!」
3階に到着すると、手芸屋さんを横目に目の前の珈琲ショップへ向かった。
いつもの豆を手に取りレジに向かうと、知っている店の人が接客をしていた。
店員「いらっしゃいませ、あれ?今日はお母さんは一緒じゃないんですか?」
「はい、今日休みじゃなくて。」
他愛ない会話をしながらお会計をしていると、店員が薬研に気づく。
店員「その子は?弟さん?」
「や、えーと。」
なんと説明したものやら、、、
とっさに説明できずにいると、薬研本人が口を開いた。
薬研「遠い親戚だ、遊びに来てる。」
店員「そうなんだ。珈琲は飲める?」
薬研「まぁ」
子供扱いが不満なのか、薬研は無愛想な返事をする。
店員「そっか。あっ、その、近いうちにまたセミナーも開催するから、良かったら来てくださいね。」
「はい♭」
商品の入った紙袋を受け取り立ち去ろうとすると、追いかけてきた店員に引き留められた。
店員「あの、、これ良かったら。」
「?」
差し出された小さな袋には、珈琲豆が入っていた。
店員「新しく発売するブレンドの豆なんで、試して見て下さい。」
「わぁ~ありがとうございます♪」
七葉はお礼を言うと、お辞儀をする。
店員が立ち去ると、薬研が口を開いた。
薬研「大将、あの男は友人か?」
「ん?ただのお店の人だけど?」
薬研「にしちゃあちょっと、、、」
「どうかした?」
何か言いたげな薬研に、七葉首をかしげる。
薬研「いや、何でもない。」
言葉を飲み込んだ薬研に対し七葉は無邪気に言った。
「この豆どんな味かなぁ?帰ったらさっそく引いて入れるね!」
薬研は、呑気な大将の後ろを歩きながら独り言を言う。
薬研「こいつは、一筋縄じゃいかねぇな。」