第22章 違和感
朝食を食べ終え、仕事のため作業部屋に引きこもる。
薬研からは適当にくつろぐよう伝えて、逃げてきてしまった。
さらっと告白的な事を言われ、嫌いじゃないなら良いとやんわり返事がいらない宣言をされてしまったので、いったいどんな反応をしたらいいのかがわからない。
「はぁ、、」
七葉は、悩ましげにため息をついた。
薬研の事は好きだ。
短刀なのに男前で、気遣ってくれるし優しくて頼りにもなる。
たまにからかわれて恥ずかしいが、それさえも不快な感じはしない。
ただ本丸の仲間として大好きでも、それを恋愛に当てはめた瞬間、心が死んでいく。
愛は苦しくて、痛くて辛くて嫌なものだ。
それが刷り込まれている自分には、とうてい受け入れられるものではない。
そんなことを考えなながら作業をしていると、直ぐに終わるはずだった仕事が昼過ぎまでかかってしまった。
作業部屋を出て部屋に戻ると、薬研はソファーに座って本を読んでいた。
テーブルには、自分で入れてきたのか珈琲が置かれている。
七葉は、眼鏡をかけ真剣な表情で本に視線をおとす薬研に思わずドキッとした。
きっとこれは、さっき告白されたせいだ。
七葉がそんなことを思いながら話しかけようとした時、こちらに気づいた薬研が口開く。
薬研「大将、仕事終わったのか?」
「あっ、うん。ごめんね、遅くなって。」
ごく普通の反応をする薬研に拍子抜けしつつ言うと、薬研は持っていた本にしおりをはさんで閉じた。
薬研「問題ないさ、面白い小説も見つけたしな。」
「そう?なら良かった。」
薬研「あぁ、しっかしここにあったってことは、こいつは大将の物か?にしちゃあかなり意外だが。」
薬研は、小説の表紙を見ながら呟く。
薬研の言葉も無理はない。
この部屋に置かれている小説の類いは、みんなホラーやミステリー、魑魅魍魎に殺人犯罪や心霊関係の話ばかりなのだ。
「私のだけど、私は読まないよ。」
薬研「は?」
薬研は意味がわからず呆然とするが、聞き返す前に七葉に話をさえぎられる。
「そんなことより、すっかり遅くなっちゃったしお昼にしよう。昨日、作っておいたカレーがあるんだ。」
七葉はそう言うと、部屋を出て1階に行ってしまった。
残された薬研は立ち上がり、棚に本を戻して呟く。
薬研「どうゆうことだ?」