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毒舌な保健医。

第1章 保健医


知ってる…
先生が何を言いたいか。


蘇る恐怖に体が震えた。


知ってる…体が覚えてる。
兄さんから受けた教育を…


『………はぁ、
わかったらさっさと…、』


『いい、よ。』


私は小さく呟いた。


『…先生がしたいように、シて』


私に自由が無くなるのなら
一度でもいいからその道から
外れた事をしてみたい。


たとえ待ち受ける恐怖が
渦巻くことになっても…
知らないままは…嫌だ。


『震えてんじゃねーか。』


先生は顔を離して私を全身見る


『武者震い…ですっ』


『ハッ…ばっかじゃねぇの?』


ものすっごく腹立つ。
兄さんとは違う…その性格。


私は喰いかかるように叫んだ。


『お願い…先生…。』





私に知らない世界を教えて…。






『………本気か。』


そう呟いた先生の眼差しは
逸らせない程、力強い。


『………うん。』


こく…と頷けば先生は
私の後頭部にまた手を添えた。


『後悔しても…知らねぇぞ。』


引き寄せられるまま
先生の唇へ口付けた。


柔らかい唇
彼の言葉とは裏腹に口付けは
とても熱くて甘くとろける。


『ん…、』


吐息を漏らせば
先生は噛みつくように吸い付いて


『……ハッ』


嘲笑うように舌を絡ませる。


くちゅ…くちゅ…


舌が絡まる度に聞こえる水音。


聞き慣れた音でも
相手が違うだけでこんなにも
興奮するなんて知らなかった。


スッ…と離された唇に
透明な糸がツゥ…と繋がり
プッと切れた。


乱れる呼吸、苦しく
息切れしていると先生は
口元を親指で拭った。


『随分と…慣れてんのな。』


図星をつかれてビク…とするも
チャンスとばかりに微笑んだ。


『だから…もっと、シてよ。』


精一杯の強がりを
先生は嘲笑うように口元を歪める。


『なめられたもんだねぇ…。』


挑発にノってくれた先生は
乱暴になるかと思えば違った。


『大人の世界、教えてやるよ。』


頬に添えられた先生の手は
あまりにも優しくて…" 怖い "


『………うん。』


逃げ出したくなった気持ちを殺し
私は先生の白衣を掴んだ。


『……教えて、せんせ。』


返事の代わりに唇が近付く。


合わさる口付けは契約の証。




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