第3章 罪悪感
『莉瑠…おはよ。』
『おはよう…っ』
友人の葵ちゃんへ近付き
たわいのない会話をしつつ
学校へ向かった。
この子は兄さんの事を
嫌いつつも仲良くしてくれる
大切な友人である。
弟がいるからだろうか
どこか私にもお姉さん風に接し
甘やかしてくれる所がある。
ボーイッシュな彼女は
可愛いというよりカッコイイ。
私とは正反対な性格だ。
『顔色…悪いよ、あんた。』
顔を覗き込まれて焦りつつ
寝不足なのと答えれば苦笑いで
彼女は笑ってくれた。
『可愛い顔が勿体無いよ。』
イケメンか…
この子が女の子で良かった…。
男の子だったらきっと惚れてる
兄からも許可はおりないし。
『彼氏だったら胸きゅんだね』
『こんなアホな彼女は要らん。』
そして辛辣である。
ムスッ…としながら
いつものやりとりに嬉しくて
学校までの道のりが早い。
教室までの道がわからない
私の為に彼女は少し前を
歩くあたり紳士的である。
お世話になります
いつもいつも…。
『お、女子高生コンビ
余裕登校とは真面目だねぇ。』
ドキッと胸が高鳴った。
知ってる声…会いたかった人…
振り向けば思い焦がれたその人で
顔が赤くなる気がした。
『おはようございます。
胡散臭い保健の先生。』
『胡散臭いは余計だ。』
友人は軽く嫌味を言うも
先生は軽々と返した。
私はなんて言えばいいか
わからなくてしどろもどろと
言葉が出てこなかった。
『んで、そっちの真面目っ子
先生である俺に言うことは?』
私の方を向いて先生は
腕を組んで見下ろした。
えっと…えっと…と言葉を
詰まらせて思いついた言葉を
吐き出した。
『今日も眼鏡がお似合いですね!!』
『集会でしか見てねぇだろ、馬鹿。』
ぽん…と大きな手が頭に触れて
先生の手が次第に撫でてゆく。
『アホな子だな…お前、』
『私の友人ながらほんとにアホ…。』
先生と友人からのアホ連発に
泣きたくなったけど、
触れた手に赤くなる顔が
隠せて心からホッとした。
兄じゃない男の人の手…
それだけで私は胸が満たされる…。