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毒舌な保健医。

第1章 保健医


ギィ…っ


放課後の入学した高校の
屋上へやって来た私は、
そよぐ風を体で浴びた。


夕焼けが沈む頃
辺りはオレンジ色に包まれて
見晴らしのいい空が広がる。


フェンスで囲まれた
屋上は案外広く作られていた。


バタン…。


閉めた扉は音を立て
ザァッ…と風は強く吹く。


髪が乱れつつもフェンスに
近寄り…ガシャ…と音を立て
下を見下ろそうとした。


真下は見えないものの
見渡す住み慣れた街は
知らない土地のようだった。


見方次第で全然違う
この景色が新鮮で眺めていた。


夕暮れに包まれた街は
何かにとけ込むようにさえ思う。


友人は先に下校し
迎えに来る兄の連絡を待つ間…


この屋上に足を進めたが
正解のようだった。


『………綺麗。』


素直にそう思った。


高い所も悪くは無いと思える。


広い…この景色にいる自分が
まるで一部のように感じられ
自由という言葉に頷ける。


家に帰れば窮屈な時間が始まる
だから今だけは…ここに居たい。


残り少ない私の自由を
どうか、もう少し…と、祈りを込める。


『子供は立ち入り禁止でーす。』


突然、誰もいないと思っていた
屋上で聞こえた声に振り向いた。


どこ…どこ?キョロキョロと
辺りを見渡せばムクっと起き上がる
人影に再度驚いた。


屋上に入る入口の屋根の上に
白衣を着た大人が座っていた。


眼鏡の先生…あの人は
全校集会で生徒と同じように
ダルそうにしていた保健医。


『子供は早く帰れよ。』


こいつほんとに先生か。


そう思わせる程、見た目詐欺に
会ってるかのようだ。


『先生も…仕事したら…。』


喰いかかり気味に答えれば
ニヤッとした先生は口を開いた。


『俺はいいんだよ、大人だから。』


とりあえず、
馬鹿にされているという事はわかった。


溜息をついた先生は
また寝転んで空を見上げているのか
何も話さなくなった。


『………っ。』


なんとなく…興味が湧いて
暇だったから先生の所へ向かった。


先生がいる所に行くために
梯子を登る時は少し怖くて


涼しかった風も落とされる
そんな恐怖に震えたけれど


一つ一つゆっくりと登った…。



(先生らしくない保健医に
少しの興味が湧いただけ…。)





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