第2章 兄妹愛
『兄さ…待って、ねぇっ』
家に辿り着いた兄は私の手を取り
何も言わずに黙々と歩き続ける。
手首は握り締められて痛みが
はしるけれど兄は手を離さない。
『痛…ぃ…兄さ…んっ』
抵抗しようにも力では
到底適わず無抵抗のまま
私は兄の寝室へと連れ込まれ
どさ…っとベットへと
放り出される。
『んっ…』
ふかふかのベットは
私の勢いを和らげてくれて
痛みはないけれど
迫り来る兄からは
身を守ってはくれない。
『僕が怒ってる理由、わかる?』
ギシッ…と私の上に乗り上げる
兄の重みでベットは軋み
私の逃げ場を塞ぐように
遮るように兄は体重を足にかける
『答えなよ。』
仰向けになった私の顔の両隣に
兄の両手が見えた時
目の前の兄の顔を見る事が出来ない
低く囁く声は兄が怒っている時
環状的にならずただ静かに急所を
狙うように兄は私を襲う。
『ま…迷子にな、って
携帯…落としちゃ…たから…っ』
私が震える声で伝えるも
兄は違うと否定した。
『わっかんないかなぁ…。
そこじゃないんだよ、んで…?』
『ひ…ぁ、』
『答えろよ、なぁ。』
迫る兄の顔が近付いて
思わず瞼を強く閉じて答える。
『ぅ…ぇと、先生が…
電話に、出ちゃった…から。』
先生が悪い訳じゃないけど
兄は私が関わる異性が全て
嫌いだと言っていたから…。
『…はぁ、別にそれはいいよ。
むしろいい先生がいて
良かったなぁ…と思うよ?
絡んだりしたら許さないけど』
今日の屋上での出来事を
絶対に知られては…だめだ。
殺される…きっ、と…。
『じゃ…、なに…?』
『お前が、僕に
連絡しなかった事だろうが。』
唇が触れる直前で
怒鳴られて私は体が震える。
『っ…う。』
迷子になったとか携帯を落としたとか
それら全てをどうでもいいと投げ捨て
待たせた事が罪だと言った。
『学校なんて行くのやめようか…
将来は家の中にずっと居るんだし
今から始めたって問題ないよな?』
私の卒業後は兄の元に
閉じ込められるという未来が待つ。
だから学校だけは…って思って
反対を押し切ったのに。
『兄さん…、ごめん…なさぃ』
『今日はどんなお仕置きにしようか』
悪魔の囁きが聞こえた。