第4章 恋の試練場
〜秀吉〜
五百年後の日ノ本から来たという、謎の女愛。
絶対怪しい。新しい忍びの類では…と刀を向けたのは
いつの頃だったか。
なぜ、俺はあんな事をしてしまったのだろう。
今にして思えば、全てが悔やまれる。
あいつは、信長様の命を救った。誰なのかもわからずに。
突然知らない場所に連れてこられ、命を落とす刀を向けられ、
どれだけ怖くて、どれだけ傷ついただろう。
出会い方が悪かっただけなのだが。
後で聞けば、その後、同じ日に政宗は愛の部屋に乗り込んで
再び刃を向けたというではないか…
愛が心を閉ざしていたのも当たり前だ。
なのに、今、あいつは一生懸命ここに馴染もうと、
毎日必死に手伝いを探している。
自分の居場所を求めるように…。
今、俺が出来ることは、自分の行いの意味をわかってもらい、
この先、存分に愛を甘やかすことだ。
あいつへの世話焼きは、当たり前の事だと思っている。
もし、自分に妹がいたら、こんな毎日を送っていたのか?
でも、最近、何かが変だ。
ただ、甘やかしたいと思っているのに、
あいつはちょっと俺を避けている気がする。
俺は何かしてしまったのか…
周りのやつらが、愛に好意を持って接しているのは
あからさまにわかる。だから、俺が守ってやらなければいけないのに。
特に、政宗と光秀は目に余る。
毎日のように愛をからかって、困らせて、怒らせて、時に泣かせて…
家康に関しては、興味がない…ふりをしている。
そんなこと、あいつの行いを見ていればすぐわかる。
冷たい言葉を投げかけながら、いつも愛を見守っている。
天邪鬼ゆえに、愛はまだそれに気づいていないようだが…
信長様が家康の御殿に住まわせると言った時は正直あせった。
どうにか阻止したが、どこかに囲われては、俺が構えなくなるじゃないか。
信長様のいつもの戯れの言葉を、愛は一々真面目に受け取る。
困っている顔見て楽しんでいる信長様も趣味がいいとはいえないが…
まぁそうやってみんなにからかわれた愛を慰めるのが俺の役目だ。
だが最近、愛はそんな時、俺を頼らない。
なぜだ…いつも三成が側で慰めているのが目立つ。
まさか、あいつまで…いや、それはさすがにない…よな?