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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第23章 黄水仙(家康)


「家康?入っていい?」

薬草を整理していた俺に、外から声がかかる。

『別に…勝手に入っていいけど。あんただったら』

そうぶっきらぼうに答える俺に、あの子は無邪気な顔を向ける。

「お邪魔しまーす」

そう笑顔で言うと、かごいっぱいの薬草をドスンと床においた。

『あんた…これ全部取ってきたの?
…って…ちょっと手出して!』

愛の右手がほんのり赤くなっているのを見逃さなかった。

「え?手?」

キョトンとする愛に少し苛立ちながら俺は少し強引にその腕を掴んだ。

『また藪の方に入っただろ…。ここ、かぶれてる』

はぁ……と盛大なため息をつく。

『前に、あそこはかぶれる植物があるから入るなって言ったよね?』

「ごめん…なさい…」

愛はさっきまでのキラキラした笑顔を引っ込めて
すっかりしょんぼりしてしまった。

『……』

あ…またやっちゃった…。この子は…俺を喜ばせたかっただけだったのに…

いつもそうだ。なんで素直に俺は喜べないんだ…。
いや、違う。本当は嬉しい。死ぬほど嬉しい。
薬草を取ってきたことじゃない。
少しでも俺の役に立ちたいと思ってくれるその気持ちが嬉しい。
でも、何よりこうして会いに来てくれることが嬉しいんだ。
もっと感謝の言葉だって伝えたい。

なのに、俺は……


『ほら、薬塗ってあげるから、そこ座って』

掴んだ腕を離して、こんな言葉を冷たく言ってしまう。

そうすると、きっとこの子は申し訳なさそうな顔で素直に座って……


「大丈夫…。前にもらった軟膏あるから塗っておきます…」


悲しそうな顔でそう言うと、

「邪魔しちゃってごめんね…」

そう呟いて、入ってきた時とは真逆に静かに部屋を出て行った。


え……?
ちょっと…なんなの……なんで大人しく俺に…

俺に?

いや違うだろ…お礼も伝えず、頭ごなしに怒ったのは俺だ…
悪いのは俺だってわかってる。
なのにあんな顔させて、自分が何がしたいのかわからなくなる。


クソ…っ


なんでいつもみたいに大人しく言う事聞かないんだよ…


性懲りも無くそんな事を思って苛々してしまう自分が腹立たしく
勝手に苦虫を潰した顔をする。


はぁ……

また大きなため息をついて部屋を出る。
あの子に謝る…ために。

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