第21章 月と金星 (秀吉)
時は遡り、愛が信長に、安土城に住みたいと話があった後の事。
事の全てを知る、光秀が信長に呼ばれた。
「秀吉は、そんな下らん事で愛を正室にしないと言っているのか」
半ば呆れ気味で脇息にもたれた信長は言った。
『秀吉らしい、と言えば、らしい考えですが』
光秀はあいも変わらずニヤニヤと笑っている。
「秀吉がどれだけあの女を大事に思っているかはわかった。
だが、あの女は俺の持ち物だ。行く末は俺が決めても異論はあるまい」
信長はそういうと、秀吉以外の武将達に集まるように指示を出す。
程なくして、政宗、家康、三成も天主へと呼ばれる。
『一体何の騒ぎです?広間では無く此処で会議ということは、
それ相応の事柄が起きているという事ですよね?』
家康はぶっきらぼうに文句を言う。
『秀吉様以外と言うことは、今回の遠征のことではなさそうですね…』
三成も真剣な表情で言う。
『大方、愛の事だろう』
事情を知る政宗が言うと、
『愛?またあの子なんかしでかしたんですか?』
と家康が眉をひそめた。
光秀が全ての事の真相を話し終えると、家康と三成は、
未だ信じられないという顔をした。
『そんな事が本当にあるんですか…』
「あぁ。いくら家康でも、時をかけるのを止める薬は作れまい」
信長がからかうように言い放つ。
『そんな薬、需要もないですからね。
それで?もう信長様には何か案があるのでしょう?』
家康の言葉に信長は口角を上げる。
「無論。
愛を俺の養女に迎える」
『え?でも秀吉様はそれも懸念されているのでは…』
三成が驚いた声を出す。
『成る程。有無を言わせぬ作戦て事か』
政宗も面白そうに話に乗ってくる。
「まずは、第一段階だ。
歴史に名を残すという意味では、織田信長の娘と言うだけで十分だと佐助に聞いた」
『いつの間にそんな話してるんですか…』
家康が呆れたように言った。
「佐助は一度同じ経験をしている。
それに聞くのが一番手っ取り早い」