第17章 我儘に甘えて(秀吉)
家康の薬の効果もあり、二日後には
だいぶ咳も熱も治ってきていた。
「ごめんね、家康。迷惑かけちゃった…
でも、もう大丈夫だよ?」
もう起きられるという愛を、
無理やり寝かしつけている家康を見上げる。
『はぁ…あのね…。こういう治りかけの時が一番危ないんだよ。
今日一日は、ちゃんと寝てないと駄目だ。じゃないと、秀吉さんに…』
「わ!わかった!わかったから…それだけは…
ケホッケホッ…」
家康の言葉を遮るように、慌ててまくしたてたあと、
愛は軽く咳き込んだ。
『ほら、あんま興奮しないで。
ちゃんと治さないと、俺が言わなくても普通に秀吉さんにバレるんじゃない?』
家康がいう通り、あと二日で治さなければ、秀吉は帰ってきてしまう。
『わかったら、大人しく寝てなよ?
あれは、急がないからいつでもいいから』
家康があの日、突然愛の部屋に訪れた理由は、
冬物の羽織のほつれを直して欲しいという依頼だったのだ。
「うん…早く治すね。ありがとう」
そう言うと、いつの間にか瞼を閉じ、
まだ怠さの残る身体は、夢の中へと落ちていった。
『まったく…。愛も三成も、素直なんだか無防備なんだか…。
秀吉さんも、苦労が絶えないな』
秀吉が毎日甲斐甲斐しく世話を焼く二大巨頭を思いながら、
家康はそっと苦笑し、愛の頭をそっと撫でてその場を立ち去った。