第2章 特別な人(秀吉)
今日は、秀吉さんとゆっくり過ごせる休日。
秀吉さんは信長様の右腕。
毎日の政務もとっても忙しい。
だから、どんなに逢いたくても、我が儘は言えない。
私も、そんな寂しさを紛らわすために、できるだけ仕立ての仕事を受けている。
着物を縫っている時は、寂しさも少しだけ忘れることができるから。
でも、最近秀吉さんに逢える日は、ちょっとだけ憂鬱だ。
逢瀬には必ず城下に連れ出してくれる秀吉さん。
そして、私をこれでもかと甘やかすように、
新しい帯、新しい反物、新しい簪…色々な物を買ってくれる。
正直、とっても心苦しい。
同じ様にお返ししようとしても、秀吉さんは絶対に受け取ってくれない。
だから、羽織や着物を仕立ててお返ししようとするけど、
出来上がったものを渡す時、いつも秀吉さんは少し曇った顔をする。
「仕事で忙しいんだから、俺の事に時間を使うな」
そう言うのが最近の口癖。
じゃぁ、どうやってお返しすればいいんだろう。
私はいつも頭を悩ましている。
そもそも、私は、沢山のプレゼントが欲しいんじゃない。
ただ、秀吉さんと一緒にいる時間が欲しいだけなのに…。