第9章 アイ(家康)
「ごめんね、家康…私…」
『どうしたの急に…』
(何?なんでそんな切ない目で俺を見るの?)
「ごめん…私…謙信様を、ほっとけないの…
安土には帰れない。家康は強いから、私が居なくても大丈夫だよ」
(何言ってんの?全然意味わかんない…)
『愛?どういう…こと?』
(うわ…声がこんなに震えるなんて、どうかしてる。
愛…お願いだから泣かないでよ…)
『そうやって、泣いてるだけじゃ、わかんないでしょ』
(あ…違う。怒りたいわけじゃない…)
「ごめ…。もう一緒には居られないから…私の事は忘れて」
(そんなっ…そんな事できるわけないでしょ?!)
「家康様、愛様も悩まれ、とても辛い決断をされたのです、
どうか、ここは愛様のお気持ちを…」
『三成は黙ってて!お前に任せた俺が間違ってた。
これ以上喋ったら、今すぐここで斬る』
「家康!どうしていつもそうなの?
私の気持ちなんかいつもわかってくれない…。
とにかく、もう家康とは一緒に居られないし、安土にも帰れない。
私は…謙信様と一緒にいるって決めたから!」
(あっ!待って!どこに行くの愛!
俺を一人にしないでよ!俺の側で平和な日ノ本になるのを見届けてくれるんでしょ?)
『愛…!行くな!!』