第1章 ワームホールはすぐ側に(家康)
一通りの話を聞き、佐助と秀吉はそれぞれ帰って行った。
家康は、今日1日の目まぐるしさを考えていた。
愛に、辛い過去があったのも知らずに
酷い言葉をかけてしまった…
自分の天邪鬼さが本当に恨めしい。
500年後に帰った方が良かったんじゃないの
と、まで言ってしまった。
明日、その危険が迫ってるのも知らずに。
でも、愛は知っている。
もし、あの言葉を本気に捉えて帰ってしまったら…。
「私の側に現れないで」と言って、
本当に大切な人が現れることが無くなった時、
愛はどんな気持ちだったんだろう…
『500年後に帰った方が良かったんじゃないの』
そう言って、明日本当に愛が帰ってしまったら…
自分はどんな人生をこれから送ることになるんだろう。
検討もつかない。
愛がいない人生を想像したこともない。
外は雨が降り出したようだ。
明日はずっと、愛を抱きしめていよう。
明けることの無いような感覚に陥るほどの夜の闇と
嵐を連れてきそうな雨音に、家康は、
この世で自分しかいないのではないかと錯覚を起こしそうになっているのだった。