第6章 恋の試練場 後編
「ねぇ、お風呂入りたい」
薬を飲ませ終えた家康に愛が言う。
『おう。俺が入れてやるよ』
横か政宗がニヤつきながら割り込んでくる。
『はぁ…。もう政宗さんは黙って。
湯浴みさせてあげたいけど、火傷がもう少し綺麗になってからにしないと
膿が出るかもしれないから、もう少しだけ我慢して。
身体拭けるように用意してあげるから』
「うん」
愛が静かに頷くと、家康は女中に用意をさせた。
『よし、俺たちは帰るぞ』
秀吉は政宗の肩に手を置き言う。
『…しょうがねぇな。愛、また朝来るから。またな』
何時もの政宗なら、こんな時あっさり帰らなそうなのに…と思いながらも
「う、うん。ありがとう。おやすみなさい」
と、返事をする。
政宗は愛から向き直り秀吉に目をやれば、
愛と同じ疑問を抱いたのか、顔が少し驚いていた。
『嵐でも来るんじゃ…』
家康のとどめの呟きに、
『お前らなんなんだよ!
俺だって素直な時くらいあるわ!』
と、声を荒げると、
「政宗様はいつも、本能のまま、素直だと思いますよ?」
三成が笑顔のまま言う。
『人を獣のような言い方するな!』
と反論するが…
《そうだろ》《そうでしょ》
三成以外の全員の声が重なり、政宗は肩を落とし諦めたように部屋を出たのだった。