第6章 恋の試練場 後編
秀吉との話を終え、政宗と家康は愛の待つ部屋へと戻る。
秀吉も、もう一度愛の顔を見て自分の御殿に戻る事にしていた。
しかし、二人に少し遅れて部屋の前に着けば、
襖を開けずに政宗と家康は聞き耳をたてていた。
「おい、お前たち…」
声をかける秀吉に、二人は同時に「しっ」と合図する。
仕方なく二人の中に加われば、部屋の中からは愛と三成の声。
『見守るだけじゃない。いつも私をちゃんと守っててくれたよ?
私、三成くんが…好き…だよ』
愛の声と共に聞こえる衣擦れの音に三人は顔を見合わせる。
『愛様からのお慕いを受けるなんて…私は日ノ本一の幸せ者です。
私も、愛様をずっと、お慕い申し上げておりました』
『もう、私のために命を粗末にするような言葉は言わないでね?』
『知っていたのですね…。あの時は皆様に、
特に信長様になんとお詫びをして良いのか…。
皆様が愛様をどれだけ大切にされてるかを知っていますから』
『…え?みんなが?』
『そうですよ。愛様からのお慕いを受けたと知られれば、
きっと…私は違う意味でこれから命が危ないかもしれません…』
「三成。絶対に許さない。俺が必ずお前を…」
「家康…心の声が漏れてるぞ」
政宗に言われてハッとする家康。
『愛さ…ま…』
「何があったんだ…」
秀吉が訝しげに呟く。
『やっぱり、愛様を守る事が最優先ですね。
こんなに可愛らしい顔、他の人にされては困りますから』
『み、三成くんにだけだよ…好きな人にしか…しないもん』
「あいつ…やる時はやるんだな…」
政宗が険しい顔する。
「秀吉さんが、愛に三成を笑顔にしてやってくれなんて言うからですよ」
家康は本当に機嫌が悪そうだ。
愛を床に着かせた音を確認して、秀吉は襖をあけた。
「愛具合はどうだ?」
平静を装って声をかけたはずだった。
『秀吉さん、どうしたの?熱あるの?顔真っ赤だよ!』
愛にびっくりされるくらいならば、誰が見ても真っ赤なのだろう。
『秀吉様、大丈夫ですか?早くお帰りになってお休みください』
三成も大真面目に心配する。