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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第5章 恋の試練場 中編


「今度は何始めたの…」

誰に言うでもなく、独り言を溢すのは家康。

たまたま通りかかった廊下の反対側で、
中庭に向かって座っている愛を見つけた。

(話しかけても…怖がらせるだけか…
全く、なんで嫌われてると思ってんの…)

愛が自分に嫌われてると思い込んでいることを思い出し、
何をしているのかは気になるのだが、近づけないでいる。

そこへ、愛付きの女中が現れ、話しかけている。

(何かを選んでいるのか?)

恥ずかしそうな顔をしながら、女中が籠の中の何かを真剣に選んでいるのが見えた。
そんなやり取りを終え、また愛が何か作業を開始している。
作業を開始すると、仄かに良い香りが家康まで届く。

『あら、家康様、如何されましたか?』

先ほどの女中に不意に声をかけられ、家康はビクッとする。
と、同時に、愛にもその声は聞こえ、家康を見つけた。

「いや、別に…また愛が何か変な事始めたのかと思って…」
なんとか言葉を発する事が出来た家康を不思議そうに女中と愛が見る。

(仕方ない…)

家康は、そのまま愛の方へ歩く。
近くに連れて、白檀の香りは強くなり、愛が練香を詰めているのだとわかった。

『なに?それ』

素っ気なく聞かれ、愛は一瞬言い淀むが、

「香袋を作っていて…あ、匂いきつかったですか?」

申し訳なさそうな声で愛が言いながら家康を見上げた。

家康は、それには何も答えず、愛の隣に座り、
おもむろに空の袋を1つ手に取ると、その繊細な作りをまじまじと見つめ

『これ、あんたが作ったの?』

と訊く。

「はい…先日端切れを沢山頂いたので…」

ふぅん。と、言うと、家康はその袋に練り香を詰め始める。

「あの…」

急な家康の行動に、何と言えばいいか困っていると、

『あんたとろいから、日が暮れる』

目も合わせずに家康は言いながら手を動かす。

(手伝ってくれるんだ…)

家康なりの優しさのような気がして、愛は緊張していたものが綻んだ。

「ありがとうございます。家康さん」
と、微笑んだ。

家康は、相変わらず手を動かしながら、

『さん、とかいらない。家康でいい』

「え?」と愛がきき返す。


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