第84章 ジャックダニエル
常に肌身離さず持ち歩いている主ちゃんからの贈り物を取り出し、指で表面に彫られた藤の花を撫でる。
「"あなたの愛に酔う、決して離れない"だ。…だが、藤の花には少し怖い話もあってな、死んでも返さないというのがあるらしい。」
俺の本懐さ。と、ぽつりと零し、嬉しさと寂しさの混ざった様な笑顔を浮かべる。
あの主ちゃんに、この長谷部君か…
お互いに欠けた部分を埋めてるんだね。なら、この二人が惹かれ合い求め合ったのは必然だったのかもしれない。
「そっか‥」
端から見たら重いとか病んでると言われそうだ。それでも、僕等はそれを望む。
良いな、長谷部君。
その言葉があるから、君は君を保っていられるのかもね。僕もちゃんにそう言われてみたいよ。