第68章 海風
「ここは‥良い所だよね。山もあって海もある、雪も降るし春には沢山の桜が咲くの。」
「…そうか。」
きゅっと俺の腕を掴んで続ける。
「私の生まれた所も育った所も、もっと沢山人が居てこの辺りとは比べ物にならない程賑やかで、車や電車が沢山走ってる所なんだ。建物もいーっぱいあるんだよ?…鶴丸が見たら驚く様な高い建物とかね。ふふ。」
もう帰れないけど、と聞こえた気がしたが、波音で消されてしまった。
唇を噛んで遠くを見るは何を考えてるんだろな‥
「早く、本丸へ帰りたいね。」
「…」
背中に回した腕に力を込める。