第36章 鍵①
サラサラという音で目が覚めた。
今日は雪か‥庭の寒椿の赤に白が生える。縁側に出て座って居れば、後ろを通った燭台切に声をかけられた。
「おはよう、三日月さん。こんな所に居たら風邪を引くよ?」
「ああ、燭台切か。おはよう、今日はやけに早いんだな?」
「えっ…あぁ、うん。今日は早く朝食の支度をしようと思ってね。三日月さん、暖かい格好しないとだめだよ?じゃあ、また後で。」
ぎこちなく笑って見せた燭台切が、足早に厨の方へ去って行く。
…長く生きていれば色々な事があるものだ。今日も朝食が上手いといいのだがな‥。はっ、と吐いた息が白く消えて行くのを、ただひたすら目で追っていた。