第34章 幻の向こう
鼻を突く血の臭い。
出陣していた皆を出迎えて思わず悲鳴を上げた。
「み、皆…?凄い怪我、何があったの!?早く手入れ部屋へ!他の子達も手伝って!」
半数が重傷なんてこんな事今までなかった。
出陣してもらった時代は確かに進軍が難しい。でも遠戦を警戒した装備で固めてもらって、軽傷はあったとしても今の彼等ならこんな深手を負うほどではないと思ってたから。
憔悴しきった様な顔の皆が口々に言う謝罪の言葉。
「…‥ごめん、主ちゃん‥」
「‥すまない…」
?
回りを見れば、いつもなら遠征や出陣から戻れば真っ先に報告に来る彼が居ない。
「ねぇ…長谷部、は?」
俯き黙り混む。
そんな皆を見て、まさか‥と嫌な悪寒が走った。