第94章 今を生きる
「今日はあれだろ、例の貞ちゃんとやらを探しに行っているらしいな。」
「ぬしさまは我々の負傷を危惧して江戸への出陣を控えていました。しかし、それに痺れを切らした大倶利伽羅の説得に負けて、一回だけという約束で出ているようですよ。」
「貞ちゃん??」
「ああ、燭台切がずっと待っている短刀だ。…俺が大包平を待っているようにな。」
麦わら帽子の紐を直しながら、鶯丸さんが少し寂しそうに笑う。
「そっか、皆会いたい奴が居るんだな。…鶯丸さんも、早くその大包平さんに会えるといいな!あ、じゃあ燭台切さんは大倶利伽羅さんの帰りを待ってるのかな?」
「ええ、恐らくは。」
「燭台切の所へ行くならこれを持って行け。心配なのは解るが、考え過ぎても気が滅入るだけだからな。」