第93章 白妙
「俺に?」
「あぁ、そうだ。‥まぁ一杯。」
小狐丸に渡された猪口を受け取ると、三日月がなみなみと酒を注ぐ。
「どれ、乾盃しようか。」
「ええ、では私も。」
俺達の可愛い主が帰った祝いに、と猪口をかちりとぶつけた。ぐっと一気に飲み干して、空になった猪口の底を見ていると三日月が話し始める。
「…主は随分と柔らかく穏やかに笑う様になったなぁ。以前から良く笑うし、楽しそうに話しもしていたが、時折見せる影の様なものが気になっていたんだ。」
「良く見ているんだな。…そうだな、主とは向こうに帰っている間に色々とあったからな‥」
ふっと、三日月が目を細める。俺達は向こうで、主の過去を知った。俺は燭台切と違って見守る事しか出来なかったが、何か主の心持ちが変わる手助けになったのだろうか。