第93章 白妙
「信長様が好んで歌ってた“死のうは一定、偲び草には何をしよぞ。一定語り起こすよの”ってのをさぁ、歌うんだよあいつ。そんでさぁー?頭撫でながら、俺も一緒に偲び草を作ってくれたら嬉しい…とかさぁ?」
俺にそれだけ想われて羨ましいとか‥何考えてんだよ、あいつ。と言って両手で顔を隠した不動の声が震える。
「いつか自分の事も主って呼んでくれるのを待ってるって…本当、わかんねーよ。」
正直、前の主の話を聞くのは好きではない。何とも言えない気持ちになるからな。ただ、偲び草…生きた証という言葉が強く心に刺さった。
一層縮こまった不動の頭を撫でると、驚いて顔を上げる。…何だ、何も言わないのか。
「主はそういう方だ、俺も真意までは解らん。ただ、そうだな…あの方なりに近付きたいと頑張っているんだ。それだけは解って欲しい。」