第90章 残り香
「…主殿?この様な時間にどうなされたのですか?」
「あっ…い、一期、おはよぉ。」
物音で目が覚め、部屋を出るとタオルを持って浴室から出てきた主殿の姿が有った。
窓を見ても、まだ辺りは薄暗い。起き出すのが何時もに比べると早い様な気がしますが…何かあったのでしょうか?
「えっと…あ、散歩しようかなって思って。あはは。」
散歩?こんな早くに?
手にしていたタオルを少しだけ開いた自室の扉から中に投げ込むと、そのまま玄関へ向かおうとする。
「主殿、四月とはいえまだ冷えます。それに外も暗いですし、私もお供しますよ。」
「え!?……あぁ、うん。アリガトウ‥」
玄関横に置いてあったジャケットと薄手のロングコートを手に、主殿の後に続く。