第88章 四月一日
何も考えず、直球で誉の褒美に主が欲しい、など口が裂けても言える訳が無い。なら、やはりさっきの嘘の訂正をした方が解りやすいだろうか。嘘だ、と言った事が嘘なのだと。
いや、そもそも俺は最初から嘘だったなどと言っていない。なら嘘から出た実にしてしまえば言いか。
「長谷部ぇ?」
「…いいえ、何でも。もっと二人きりで居たかったですね。」
「うん。んー?」
悩んでいる姿も愛らしいな。まぁ、誉などいくらでも取ってきてやる。ならこの願いを伝えるのはいつでも良いか。
「俺が、いつも一番に想っているのは嘘ではないですよ。それだけ覚えていて下さいね、さん。」
「ふふっ、当たり前でしょ?長谷部くん。」
ぎゅっと握った手を握り返したところで、それに気付いた燭台切に、見せ付けるように抱き締めた。