第101章 渡り廊下
季節の花が並ぶ、手入れの行き届いた中庭。
その中庭を挟んだ向かいの校舎に、僕が片思いしている人がいる。
大野智先輩。
隣の教室の近くにある渡り廊下を通れば、そこには容易に辿り着けるのだけど。
向かいの校舎には最上階に体育館、3階は三年生で2階には一年生の教室、1階は調理実習室などがあって、特別な用事でもなければ通る機会なんてあまりない。
チラッとでもいいから、大野先輩を見たいなぁ。
そんな僕にとって渡り廊下を通ることは、なかなかの勇気がいる。
用事もないのに、いや、僕の個人的な用事はあるんだけど、上級生の教室に接近するのはハードルが高い。
今日こそは頑張るんだ、櫻井翔!
目を瞑り、拳で左胸を2回叩きながら自分にエールを送る。
そして、一歩二歩と進んでいく。
だけど向かいの校舎に近づいていくにつれて、ドキドキとバクバクでいっぱいいっぱいになった僕は
「やっぱり今日もムリッ!」
…速攻で引き返す日々が続いている。
でも、今日は半分近くまで行けたから。
そんな僕を、向かいの校舎の廊下の窓からあなたがふにゃっと微笑んで見ていることは、僕だけが知らない。
END