第76章 智くんのお誕生日
今日11月26日は、俺の愛する愛する智くんの37歳のお誕生日。
智くんのお母さん、いつも産んでくれてありがとう。
「智くぅん」
さっきから何度呼んでも智くんが部屋から出てくる様子がない。
「入りますよ〜」
一応声をかけてから、智くんの部屋のドアノブに手をかけた。
そぉっとドアを開けて中を覗いてみる。
朝陽が射すベッド。
そこには足をベッドから下ろし、後ろに手をついて顔を上げて座っている智くんがいた。
光の中にいるその姿は、まさに森の妖精みたいで。
俺は吸い込まれるように、その姿をじっと見ていた。
智くんが深呼吸して、チラッとドアの所にいる俺に視線を向けた。
その顔はヒュッと息をのんでしまうくらいとても綺麗だった。
「ふふっ。翔くんさっきから何してるの?こっちにおいでよ」
ふにゃんと微笑まれた俺は、ゆっくりと智くんのほうに近づいていった。
何度となく入ったことのある部屋なのに、今はなぜか別の世界にいるような不思議な気持ち。
「なんか、今日の翔くんリスみてぇだな。キョトンとして」
「智くんが森の妖精みたいで見とれてた…」
智くんの目の前に立つ俺の手を、智くんの綺麗な手がそっと握る。
「道に迷ったリスさん。ここで一緒にひと休みしませんか?」
「はい、妖精さんとひと休みします」
智くんの手が俺の背中にまわり、ゆっくりと距離が近づく。
「智くん、37歳のお誕生日おめでとう」
「んふふ。ありがとう、翔くん」
「本当はさ、もっと早く言いたかったのに」
「ふふっ。焦らされた?ごめんな」
唇をくっ付けあいながら言葉を交わした。
「誕生日プレゼントは…翔くんが欲しい」
「うん。俺をもらってくだ…あっ…」
言い終わる前に、俺はベッドの中に誘われました。
智くんの誕生日は、俺も幸せを感じる日。
END