第65章 それは突然に…
(Oサイド)
お昼時の蕎麦屋さん。
4人席しか空いてなくて、後で相席になっても良ければすぐに入れるという。
いつもはカウンター席が空くのを待つんだけど、今日はその席でもいいような気がしてOKした。
暫くすると、相席で…と店員さんが話しているのが聞こえてきた。
僕もさっき座ったばかりだし、長い時間一緒の席にいないといけないことに少し後悔した。
…なんて、ほんの3秒くらい。
顔は見てないけど、目の前に現れた男性からいい香りがする。
暫く席の前で立ち尽くしているその人に、店員さんが声をかけた。
あっ…
返事をしている男性の低音ハスキーボイス。
いいな。好きだな…その声。
しかも、案内されたこの席を「大変気に入りました」って。
落ち着いた声とは裏腹に、可愛らしい人でもあるんだな。
思わずクスッと笑ってしまった。
そしたら…
その人がなぜか自己紹介をしてきたんだ。
どうしても顔が見たくなった。
チラッとだけって思ったんだけど…
うわっ…
カッコイイし綺麗…。
その人のとこだけキラキラ輝いている。
僕は、その人の虜になってしまったみたいだ。
「僕は、大野智です。初めまして…」
その人から、もう目が反らせない。
END