第56章 ボクたちのカタチ
(Sサイド)
智くんの手が伸びてきて何をされるんだろうって身構えていたけど、前髪を優しくかきあげられた。
デコピンした所を見た智くんは一瞬目を見開いて、そこを指でゆっくり撫で始めた。
意地悪したかと思うと、今度は優しくしてくる。
ほっとかれるよりは嬉しいし、こんなに近い距離感はいつ以来だろう。
そんなことを思っていたら、胸がギュッとして目頭が熱くなってきた。
何だか泣きそうになって、下唇を噛んでこらえた。
暫く見つめあっていたら、智くんがフワッと俺の頬に手を添えた。
えっ…
「翔。好きだよ。」
甘く優しい響きで聞こえた、俺が欲しかった言葉。
“好きだよ”
その言葉が頭の中でぐるぐる繰り返される。
そしたら…
ちゅっ。
リップ音とともにおでこに智くんの唇の感触がした。
おでこにキス…してくれてる。
俺は咄嗟に智くんの服の腰辺りを握った。