第29章 素直に言えなくて
(Oサイド)
ササッ…スラスラ…
「うーん…。何か違うんだよな…。」
鉛筆片手に、キャンバスとにらめっこする。
仕事が久しぶりに定時で終わった。
恋人の翔くんにメールしてみたけど、今日も残業になるらしい。
もう10日会えてないなぁ…。
その間に描いた5枚の翔くんを部屋に並べて。
目の前には6枚目がある。
「翔くん、こんなだったっけかなぁ…。」
翔くんの顔…手…
イマイチしっくりこないんだ。
ふぅ…。
風呂、入ってくるか。
俺は鉛筆を置き、風呂に向かった。
…スマホの光に気づかずに。