第104章 シュワシュワ
「ただいま」
スクールバッグを置いて革靴を脱ごうとしていた時、思い切り振られている尻尾が視界に入った。
「散歩にでも行くか?」
玄関でリードを用意していると、スタタタタッと勢いよく走って来る可愛いやつ。
片手でも抱っこできるくらいにまだ小さなキミは、黒が多めの毛並みに赤のリードがよく似合う。
姉ちゃんがペットショップでひとめぼれしたって言ってたっけ。
こんなに可愛かったら、誰だって連れて帰りたくなる。
今日明日は姉ちゃんがいないから、その間のお世話は俺がすることになった。
「俺がいるから寂しくないよな、ショウ…」
そんな呟きを理解してるんだかしてないんだかわからないけど、何だかショウが俺の顔をジーっと見ている…気がする。
クリックリの可愛らしい目がアイツに似てるんだよなぁ。
名前を迷っていた姉ちゃんに“ショウ”って提案したのは俺だ。
まさか、アイツに似てるからなんて言えなくて。
賢そうだからとか、メスにつけてもおかしくない名前だからとか色々プレゼンしたら、すんなりとそれが通った。
グッジョブ、俺!