第4章 rainy〜岩泉〜
わかっていた。
覚悟していた。
だから、きっと辛くない。
そう思ったけど、やっぱり辛い。
それほど椿が好きだったから。
俺も男だ。
だから、グダグダ言う気はない。
及川と少し騒いで
椿に聞こえないくらいの声で
「幸せにしろよ。」
及川は、
「あったりまえじゃん!」
そう言う割には目が潤んでるけどな。
「泣くんじゃねえ。気持ち悪い。」
「ひどい!!!」
そうそう、それでいい。
いじられて泣く方がお前にはピッタリだ。
俺は彼女の目の前に行った。
気まずそうな顔をした彼女。
「幸せにな。」
そう言うと彼女は泣きながら笑った。
その笑顔は今まで見た中で1番綺麗だった。
彼女を、
椿を
好きになってよかった。
ふと、空を見上げた。
晴れた空を見ながら俺の目は潤んでいた。