第1章 cloudy
卒業式。
今回の卒業式は今までとは違った。
大学進学への期待はもちろんある。
でも、その期待より何倍も大きい悲しさでいっぱいだった。
これから、みんなはそれぞれの道を行く。
俺もその1人だ。
俺の1番大切な人も
椿も
俺の大切な仲間達も
「クロ!」
後ろから聞き慣れた声がする。
中学からだもんな、そりゃそうか‥
「ん?なんだ?」
振り返ると不安そうな顔の椿がいた。
「あのさ!写真‥‥ 撮らない?」
少しずつ小さくなる声。
俺が断るとでも思ってるんだろうか。
まあ、気まずい時もあったし
最近は話してなかったもんな。
「じゃあ、桜の木のとこでどうだ?卒業式って感じ出るだろ。」
それを聞いて安心したのか
萎れた花が、また咲き誇ったみたいに笑う。
「うん!」
カシャッ。
よく考えれば
椿と2人で写真を撮ったのは初めてかもしれない。
これも良い思い出だな。
カシャッ。
また、音がした。
「クロの写真!ボケェーってしてるやつゲット!」
「あ!椿!お前、それ絶対ネタに使うだろ!」
「当たり前じゃん。」
真顔で言われたもんだから
咎めようもなく観念することにした。
「研磨、来てー!3人で撮る!!」
端っこの方にいた研磨は面倒臭そうにやって来て
3人で写真を撮った。
そして研磨は俺に一言、
「クロ、おめでとう。」
と言って
その後すぐに夜久や、海のところへ言った。
研磨は写真を撮ることをどちらかと言えば嫌いと言うはずだ。
でも、3人で撮った写真は少なくなかった。
それは俺たちが"仲間"であったことを示すには十分だと思う。
とても大切な存在。
それはこれからも変わることはないだろう。
そうこうしていると、携帯に通知がきた。
最後だからな、会いに行くか。
俺は用事があると言ってその場を後にした。
少しでも早く会いに行きたくて
全力ではないものの俺は走った。