第9章 拷問 ~前編~
翌日、目を覚ました私は、早速次の準備に取り掛かることにした。もう、私は止まれない。よく分からないけれど、私の中に巣食ってしまった渇きと、焦燥感にも似た衝動のままに、私は、動く。
「セバスチャン。昨日、金本マオが死に際に言った名前、覚えてる?」
「ええ。確か、“シロモト”とおっしゃいましたね。あとは、お名前は出て聞きませんでしたが、上司の存在を口にしていました。」
流石はセバスチャン。そんなことまで、記憶しているなんて。
「お嬢様を解雇したのはその上司で、自分はただ、“シロモト”という方に言われただけだとか、そのような内容の事をおっしゃっていましたね。」
「そう、それ。城本っていうのは、城本美沙(しろもと・みさ)っていう、元同僚。上司っていうのは、その職場にいた部長で、矢田夏雄(やだ・なつお)っていう、中年の男。セバスチャンには、こいつらについて、面白いネタを調べてきてもらいたいの。」
「はい……?」
セバスチャンは、不思議そうな顔を浮かべている。
「私も、ハッキリとは覚えてないけど、噂ではこの2人、浮気してるとか、何とか。矢田夏雄は妻子持ちなのに、若い城本美沙に手を出してたとかで、一時期噂になってたから。もし、それが本当だったら、“使える”じゃない?」
「成る程。そういうことでしたか。」
「そうだなぁ~……。浮気調査だから……。」
私は、色々と思案してみたけれど、結局定番のネタしか浮かばなかった。でも、コレで面白いものがみられるのなら、安いものだし、やってみる価値はあると思う。