第8章 不可逆
「っく、ふ、……ふふ――――――、あはははははは!!」
それが―――――その呆気無い終わり方が、どうにも滑稽で、我慢できなかった。そうだ。そうだった。私だって、本当は“あの時”、こんな風に呆気無く、散りゆく運命だったんだ。それを思うと、笑わないではいられない。私は、今しがた焼け死んだ蝶々みたいに、狭いところで散々な目に遭わされて、死ぬ間際まで追い詰められたのだ。いや、私は、あの時セバスチャンと契約しなければ、間違いなく死んでいた。あの小さな部屋で、何もできずに、たったひとりで。
「あははははははは……! もう、誰ひとりだって、逃がさない!」
――――――――見上げた月は、紅かった。
『第8章 了』