第7章 凌辱 ~後編~
「この遺体は、どう処理いたしましょう?」
セバスチャンの声で、私は現実に引き戻される。そうだ、遺体をこんなところに放置するのはマズイ。どこかへ遺棄する必要がある。
「どこかへお運びしましょうか? それとも……。」
「樹海。」
何となく、その単語が浮かんだので、言ってみた。理由は特にない。
「ホラ、エコ。時代はエコロジーだから。こんな女のカラダでも、微生物なんかに分解されて、植物が生い茂る栄養素になるなら、それってイイかなって。」
完全なる口から出まかせだ。でも、いいや。なんでもいいや。こんな女でも、これで最期まで何かのタメになるような、そんな存在でいさせてあげるんだから。
「承知いたしました。すぐにでも、樹海の中央部、人目に付かないところへ、遺棄して参ります。それにしても、彼女はこれから、永劫にも等しい孤独を味わうのですね。」
セバスチャンは遺体に一瞥をくれた後、私へと視線を戻した。
「悪魔に繋がれた身と、遺棄される孤独。さて、どちらがより、酷でしょうか……?」
ふと、セバスチャンが嗤(わら)った。―――――いや、違う。私はきっと、嗤われたのだ。
「さぁ、分かんない。それよりも、また“鎮めて”よ。このままじゃ、眠れないから。」
昂(たかぶ)った気持ちのまま、私の口は、そんな言葉を紡いていた。
『第7章 了』