第7章 凌辱 ~後編~
「殺された……? 翔くんが、アンタたちに……?」
「いや、どう考えでも、この場合そうとしか結論出来ないと思うけど。」
私は、金本マオの答えに、間髪入れずに突っ込んだ。
「な、なんで……?」
金本マオの声は、情けなく裏返っている。まるで、以前の私を見ているようで、ひどく不愉快だった。私は、その問いに答えず、代わりにカッターナイフの刃を少し出して、乳房に突き立ててやった。
「ぐぁ……!」
金本マオは、眉間に皺を寄せ、苦悶の声を発した。
モニター越しとは言え、茨木翔を目の前にしても、私は何の感慨も湧かなかった。心が動かなかった。でも今は、この女には、私は憎悪を滾(たぎ)らせている。理由は、よく分からない。でも、この女は、私が……、私が自らの手で凌辱しなければ、気が済まない。あぁ、そうだ。そうだった。この“女”を、“女”じゃなくしていくんだった。指の先から、腕、胸へと進めて……。“女”であるという“部品”なり“象徴”なりを、この手で削いでいくのだ。
私は、すっかり冷たくなっている金本マオの手を取った。白い手に、細長い指。左手薬指に、控えめに輝くシルバーの指輪。どこをどう見たって、美しい、女性の手指だった。そう、ここから凌辱を始めるのだ。ただ殺すだけじゃダメ。相手の大切なモノを、少しずつ削ぎ落として、最後の残り滓(カス)でさえも、蹂躙してやる。わたしは、凌辱のイロハなんて知らないけれど。