第3章 快復
私の体調は、日に日に良くなっていった。セバスチャンの言われた通りに栄養食を摂り、少しずつではあるが、動くこともできるようになってきた。久し振りにシャワーも浴びることもでき、ひとまずスッキリした。掃除も、セバスチャンがあの後約束通りにやってくれたらしく、部屋は粗方片付いており、床の上に何かが散乱しているという状況でもなくなった。元々狭い独り暮らし用の部屋だから、片付けたところでさほど広くも無いのだけど、それでも、小奇麗になるというのは気分が良い。セバスチャンが執事をやっていたというのは、紛れもなく本当のことだろう。狭い家の中のことだけれど、「やる」と言ってくれたことについては、私が気付いた時には既に終わっている。今も、私がシャワーを浴びている間に買い出しに行ってくれたらしく、冷蔵庫の中は、栄養価の高そうな食材が適量詰め込まれていた。
「さて、そろそろ、普通食に戻していきましょう。おかゆなどはいかがでしょう?」
「あ、うん。それなら、食べられそう……。」
私が返事をすると同時に、出来立てのおかゆが運ばれてきた。運んでいるのは、数日前に見た、執事姿のセバスチャンだった。突然のことに、驚いて、返事も出来なくなってしまった私だけれど、何とかおかゆを食べ終えた。おかゆは、本当にこれがおかゆなのだろうかと思えるくらいに、美味しかった。高級日本料亭の板前が作ったおかゆだったら、こんな味がするだろうと思った。高級料亭になんて、人生で1度だって行ったことのない私だけれど。
素直にお礼を言って、美味しかったと感想を言うと、カラスの姿に戻ったセバスチャンが、それはよかったですと返してくれた。
それにしても、『悪魔』とは一体、何なのだろうか。『契約』って、一体?それに、お金とかって、どうやって調達してきているのだろう。私の口座から下ろすにしても、私は暗証番号すらセバスチャンに伝えていない。疑問が尽きない。